●  女ぎつねのしかえし 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 むかし、大崎村に快泉院という寺がありました。
 おしょうさんは、「ほうえんさま」 「ほうえんさま」 と村人からたいへんしたわれていました。
 ある秋の日のことです。
「さて きょうは、綿ほうがにてかけるか。」
ほうえんさまは、ぽつりとひとりごとをいいました。
 綿ほうがというのは、毎年秋のとり入れ時に家をまわり、少しずつ綿や米などをきふしてもらうことです。 まわるところは、三蔵子、千両、西原、足山田などです。
 ほうえんさまはころもをきて、ほら貝を首にさけ、かさをかぶり、つえをついて出かけました。
 千両の赤根坂を通りかかると、女ぎつねが道ばたで気持ちよさそうに昼ねをしていました。 それを見たほうえんさまは、きつねをおどかしてやろうと思いました。
 そこで、首にかけていたほら貝を、女ぎつねの耳もとで力いっぱいふきならしました。
 「ブー、ブー。」
 「ブッ、ブッ、ブー。」
 気持ちよく昼ねを楽しんでいたきつねは、とつぜんのほら貝の音にびっくり、いちもくさんににけだしました。
 その女ぎつねのあわてようといったら…‥・。 ほうえんさまは、しばらくの間、はらをかかえてわらいころげていました。 自分がほとけにつかえる身だということもわすれてしまって‥…。
 やがて、わらいがおさまるとほうえんさまは、
「ちょっぴりいたずらがすぎたかな。」
と、心配になりました。

 夕方、千両から西原の家をまわり、たくさんの綿や米をきふしてもらい、昼間とおった赤根坂へもどってきました。
 秋の日ぐれは早く、あたりはもううすぐらくなっていました。 ちょうどおはかの近くにさしかかった時です。
「ザワ ザワ、ザワ ザワ。」
「ザーッ、ザーッ。」
草のゆれる音がするのでふりかえって見ると、なんと にんげんがはかからはい出してくるではありませんか。 しかも、そのからだの大きなこと、顔のおそろしいこと。
「ぎゃあ! おぼけだあ!。」
めったにおどろいたことのないほうえんさまでしたが、この時ばかりはこしをぬかさんばかりにびっくりしました。 そして、せをまるめいちもくさんににげ出しました。
 やっとのことで、上ノ原までにげてきました。 もうだいじょうぶだろうと思ってうしろをふりかえってみると、
「これは いかん!。」
おばけは、すぐうしろにせまっていました。
 あたりを見まわすと、一本の松の木が目につきました。 ほうえんさまは、ひっしになってその木に登りました。 おばけも、下からよじ登ってきます。 上へ上へとおいつめられてもうにげばはありません。
 その時、ほうえんさまは、さげているほら貝に気づきました。 そこで、ほら貝をとり上げ、おばけを力いっぱいなぐりつけました。
「コーン、コーン。」
きつねの大きななき声といっしょに、ほら貝はこなみじんにくだけました。 そして、おぼけのすがたも消えてしまいました。
 ほうえんさまは、ほっとしました。 「たすかった。」と むねをなでおろしながら、お寺へもどりました。
 そこで、ほうえんさまはほら貝がこわれた時のことを思い出し、
「さては 女ぎつねのしかえしであったのか。」
と 気づきました。 そして、昼間自分のしたことが、はずかしくなりました。
 いまも快泉院というお寺が大崎町にのこっています。

とよかわのむかしばなし(豊川市小中学校社会科研究サークル発行)より引用


快泉院

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