●  報恩寺の絵馬 前のページへ戻る   HOMEへ戻る 

 小坂井の報恩寺の観音堂には、たくさんの絵馬が奉納されています。 その中に、江戸時代の有名な画家、狩野元信のかいたものだといわれる馬の絵があります。
 報恩寺の近くの農家は、麦の刈入れのころになると、何者の仕業ともわからない野荒らしが毎夜のようにありました。人々が手塩にかけて作り上げ、刈入れをしようと思っていた麦を食い荒らすのです。
「こまったなあ。」
「誰がこんなに悪いことをするのだろう。」
「交代で見張りをしなくては。」
 人々は夜になると、麦畑を交代で見張り、麦畑荒らしをとらえようとしました。
 ある晩のことです。麦畑でガサガサと音がするではありませんか。見張りの人たちは、犯人に違いないと思い静かに近寄ってみますと、馬が刈入れ間近の麦を食べているではありませんか。とらえようと思い近づくと、さっと寺の方へ逃げて行きます。寺の門をくぐつたところで馬は見えなくなってしまいました。
 人々は寺のまわりや観音堂の内を探しましたが、どこにも馬はみあたりません。
「ほんとうに馬をみたのか。」
「ほんとうだとも、確かに寺の内に逃げこんだぞ。」
「ふしぎだな。」
 次の夜から寺の内と麦畑を見張ることにしました。
 ある日の真夜中のことです。寺の観音堂のあたりで馬のなき声が聞こえました。見張りの人があわてて見に行きますと、なんとふしぎなことがあるのでしょう。元信のかいた馬が今ぬけ出そうとしているところです。
「絵馬の馬がぬけ出して、麦を食べるなんてあるわけがない。」
「夢でもみていたのではないか。」
「いやいや、この目でちゃんと見た。」
「じゃ、今晩、和尚さんに見てもらったら。」
 絵馬の馬がぬけ出るところを確かめるために、人々と和尚さんは観音堂のかげにかくれていました。真夜中になりました。
「あっ、馬が………。」
「ほんとじゃ。」
 見張りの人が言ったことはほんとうでした。
「皆の衆や、わしに考えがあるのでまかしてくれんか。」
「和尚さん、お願いします。馬がぬけださないようにして下さい。」
 和尚さんは本堂からお灸をもって出てきました。馬が絵馬にもどるのを待って足にお灸をすえました。そのお灸がきいたのか、それからは麦を食べに出なくなりました。
 今もこの絵馬の足のところを見ると、お灸をすえたあとがかすかに見えるということです。

小坂井のむかし話(小坂井町教育委員会発行)より 


報恩寺

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