● 皮膚病に効きめがあった風呂 前のページへ戻る   HOMEへ戻る 

 むかし、養父(やぶ)という村(今の金沢)の照山のふもとに、皮膚病に効きめがあるというお風呂がありました。
 このお風呂はおゆき弁天にまつわるお話です。弁天様をお祀りしてあるお社のすぐそばから、きれいな清水が四季をとおしてこんこんと湧き出ていました。人びとは、神様の水と名付け尊び、弁天様にお参りに来た人たちが、口をすすぎ、顔や手を洗ったりする憩いの清水となっておりました。
 ある晩のことです。お杜を奉る人の枕元にやさしい神様があらわれ、
「この清水で風呂を沸かせば、必ず人助けになる。」
と告げていかれました。
 このお告げで早速弁天様の境内にお風呂を作り、お湯を沸かして、湯浴びをつづけていくうちに、だんだんと効きめがあらわれてきました。むかしはおできなどの吹き出物で苦しむ人が多かったので、たちまち近所の評判になり、人から人へ、村から村へと言い伝えられ治療にくる人でたいへん賑わいました。
 秋が過ぎ、冬が駆け足で訪れようとしている寒い日のことです。農家では米の取り入れが終わって、昼間は麦蒔き、夜は籾すりの忙しい時期です。
 11月もなかば過ぎのことです。いつも静かな村に激しく半鐘が打ち鳴らされ、火事が知らされました。驚いた村の人たちは右往左往し、村中大さわざになりました。弁天様をお祀りしてある照山のふもとあたりが煙と炎でつつまれています。燃えているあたりは、おゆき弁天のお社しかないことを誰もがよく知っているので、祈るような気持ちで火事のおさまるのを遠巻きにして見守りました。男の人たちは火事の現場へ駆けつけましたが、火の手が強くて手のほどこしようもありません。
 やがて、火事はおさまって白く細長い煙が立ちのぼり、照山にすうっとたなびいていきました。以前から白い蛇が弁天様のお使いをしているという噂がありましたが、この火事で3メートルもある大きな白い蛇がお社とともに焼死しておりました。
弁天様をお守りして身がわりになったのでしょう。お風呂の残り火がもとでお社は全焼してしまいました。
 それからは、神様の水を使ってお杜の境内で風呂を沸かし、湯を使うことは神様を汚すことになるだろう。そんな思いから、村人たちに惜しまれながら、ふたたびお風呂を沸かすことはありませんでした。

ふるさとの伝説 昔のはなし(宝飯郡一宮町発行)より引用


おゆき弁財天と清水

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