●  千両の犬頭の糸 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 ずっとむかし、千両の村に役人がいました。
 役人には、それはそれははたらき者のおよめさんがいました。
「あんなおよめさんが、うちにもいたらなあ。」
人びとはたいへんうらやましく思いました。
 ある日、朝早く、およめさんは、いつものようにかいこにくわをやりに行きました。 ところがどうしたことか、かいこはぜんぶ死んでいるのでした。
「これは たいへんだ。 どうしましょう。」
およめさんはびっくりして、役人のところへとんで行きました。
「なに、かいこが死んだ。 おまえはよくはたらくとひょうばんだが、それをよいことに、かげではなまけていたのだろう。」
役人はたいへんおこって、家から出て行ってしまいました。 およめさんはひとりぼっちになり、毎日かなしんでいました。 かっていた犬も、元気がなくなっていきました。
 3年目の夏の日のことです。 およめさんは、朝早く、うらの畑出てぼんやりとくわの木をながめていました。 すると、バリバリ バリバリ という音が聞こえてきました。
「おや、何かしら。」
およめさんが近づいてみると、1匹の大きなかいこがくわを食べているのでした。 よろこんだおよめさんは、そのかいこをだいじにだいじに育てました。
 ところが、ある日のこと、おどろいたことに、およめさんがだいじにしていたかいこを、犬が食べてしまったのです。
 「ああ、かいこ1匹かうことができないなんて。」
およめさんは、あまりのなさけなさになきだしてしまいました。 犬は何も知らず、ただはなを クン クン ならしているだけです。 およめさんは、そんな犬を見ても、やさしく頭をなでてやりました。
 するとどうしたことか、犬のはなから細い白い糸が2本たれさがっているではありませんか。 およめさんは思わず糸をひっぱりました。 糸はつぎがらつぎへとでてきます。 300ほどのわくにまきつけても、まだでてきます。 竹のさおやおけにまでもまきつけました。
 やがて、犬はカつきたように死んでしまいました。
「きっと仏さまが助けてくださったにちがいない」
 およめさんは、くわの木の根もとに、犬をていねいにうめてやりました。
 いく日かすぎました。 およめさんのところへたちよった役人は、雪のように白い糸を見てびっくりしました。
 「こ、これは どうしたことじゃ。」 
およめさんはありのままを話しました。
 「そうだったのか。 仏さまがおまえをお守りくださっていたのだ。 ほうっておいたわたしが悪かったる」
 それからというもの、ふたりはまたしあわせにくらすようになり、家もゆたかになっていきました。
 その後、千両のあたりで作られた糸を、「犬頭の糸」とよぴ、天皇にさしあげるようになりました。
 千両の犬頭神社は、犬をうめたくわの木のあったところに、たてられたということです。

とよかわのむかしばなし(豊川市小中学校社会科研究サークル発行)より引用


犬頭神社

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