● 白へびの神様 前のページへ戻る   HOMEへ戻る 

 むかし、国府の町に弥兵衛という人が住んでいました。弥兵衛は、信心深いわか者で、毎日家のうらにある小さな杜をおがんでいました。
 ある夜のことです。弥兵術さんは、ふしぎなゆめを見ました。ゆめの中に、美しい女の人があらわれて、こんなことを言いました。
 「わたくしは、うらの竹やぶの中にいるものです。お願いがあります。西の郡の竹島へもどりたいのです。どうか私をつれていってください。」
そう言うと、女の人はすうっとすがたを消してしまいました。

 次の朝、弥兵衛さんはおきるとすぐ竹やぶの中をさがしました。けれども、女の人はいませんでした。ただ、社の近くにまっ白なへびが一ぴき、首をすっくともたげていました。
「変なゆめを見たもんだ。竹やぶの中にいる女なんて・・・・。それに、おどろいちまったなあ、白へびなんてはじめて見たわい。」 弥兵衛さんはすぐさま近所の人たちを集めて、どうしたらよいかをそうだんしてもらいました。みんなが、首をかしげている中で、長老が思いついたように言いました。
 「宇賀神さまじや!宇賀神さまは白へびの神様じゃで。たしか、女の神様だと聞いとる。女の人にすがたをかえて、弥兵衛にたのみにきたのじゃ。」 
 みんなは、すぐに竹やぶの中にとんでいって白へびをさがしました。白へびは、みんなを待っていたかのように社の前にいました。
 やがて、白へびは、ふんなの顔を見てうなずくと、ゆっくり社の中に入っていきました。

 弥兵衛さんは、このことを早く竹島の神主に知らせなくてはと思い、いそいで竹島まででかけました。神主さんは、その話の全部を聞き終わらないうちに、「それでわかった!」 と、大声をあげました。
 神主さんも、弥兵衛さんと同じように、ふしぎなゆめを見たというのです。 やはり美しい女の人があらわれて、「わたくしは、弁天様におつかえするものです。今、ここより東の地、国府の村におります。はやく竹島の弁天様のおそばにもどりたいと思います。どうか、わたくしをつれもどしてください。」 と、いったそうです。
 神主さんは、そう言われても、神様をさがすことなどできず、こまっていたところでした。神主さんも弥兵衛さんも、「本当にふしぎなことがあるものだ。」と、おたがいの話を聞いて思うのでした。
 弥兵術さんには、もう一つわからないことがありました。竹島におられた神様が、どうして遠くはなれた国府の村にいらっしやつたのかということです。 神主さんに聞いてみると、
「ふうむ」 と、しばらく考えた後、「四年前の大きなあらしのせいではないだろうか。」 と、言われました。弥兵衛さんも、四年前の大きなあらしのことはおぼえていました。 神主さんが言うには、その大きなあらしで、竹島の弁天様の社がこわれてしまった時、白へびさまも、大波に流されてしまったのではないかというのでした。弥兵衛さんは、すべてなっとくがいきました。

 村へかえった弥兵衛さんは、竹島の神主さんの話をみんなに聞かせました。弁天様と守り神の宇賀神さまがはなれてしまっていては一大事だ、と思ったのです。
 「どうじゃろう。宇賀神さまが国府の村におられたのも何かのえんじゃ。わしらの手で、おおくりしようではないか。」 長老のことばに、みんなはすぐさまさんせいしました。
 やがて、宇賀神さまをおおくりする日がきました。白へび姿の神様をそのままおおくりするわけにはいきません。社ごと運ぶことにしました。おはらいをしてから、社をみこしにうつしました。社は小さいものでしたが、宇賀神さまが中にいらっしゃるせいか、ずっしり重いみこしでした。
 弥兵衛の家の前には、いっしょに竹島までおくっていく村のせわ役やわか者などが、集まっていました。いや、そうした人たちだけではありません。白へびの話を聞いた国府の村中の人たちが、いっしょに竹島までおおくりしたいと言って、たくさん集まってきました。それはもうたいへんなにぎわいでした。
 いよいよ出発です。弥兵衛たちがかついだみこしを先頭に、酒だるや、おもちをつんだ大八車がつづきます。その後に、人々の行列ができていました。まるでお大名かお姫様の行列のようでした。
 竹島の村の人リロあたりに来ました。今度は、竹島の村の人たちが、大ぜい出むかえていてくれました。国府の村の人たちと同じくらいの人数です。神主さんのすがたもあります。国府の村の人たちと竹島の村の人たちは、いっしょになって竹島まで歩くことにしました。無事事、竹島までみこしを運びおわると、小さな社から白へび様がでてきました。そして、深く預を下げると弁天様の社の中にするすると入っていきました。それを見て、国府の村人も竹島の村人も手をとり合って喜びました。
 こんなことがあってから後、みんなはお金を出し合い、宇賀神さまのための社をつくってあげることにしました。それ以来、国府の村の人たちと竹島の村の人たちは、とてもなかよくするようになりました。
 弥兵衛さんは、今まで以上にその小さな社を大切にして、毎日おがむことをわすれませんでした。そして、いっしょうけんめい働き、村一番の庄屋さんになったということです。

 白へびの神様(宇賀神)ということで、巳年の大祭(12年に1回のお祭)には、国府村の人たちの「竹島弁財天総参り」の風習は今日まで受けつがれています。

ふるさとのはなし とよかわ(豊川市発行)より引用


竹島弁財天総参り

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