● 大玄和尚ときつね 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 昔、高足村(高師)の高林庵に、いたずら好きの大玄という和尚がいた。 ある日、和尚が南の浜の村に用事で出かけることになった。
 和尚は草鞋を履き、大きな信玄袋を肩にかけ、朝早く寺を出ると、南の浜の村に向かって、てくてくと歩いて行った。 やがて高師原から野依村を通り、南の浜へと続く赤土の道を進み、天伯原の中ほどまで来たところで、小高い丘の上に立つと、
「今日は暑いわい。 まだまだ先は長い、ここらで一服しょう」
 和尚は腰をおろすと、汗をぬぐいながら南の方を眺めた。
 天伯原は一面にススキや小笹が生い茂り、小松林が点在していた。 ふと、足元の丘の下に目をやると、狐たちが我が物顔で野原を駆け回っていた。 いたずら坊主が、これを見逃すはずがない (これはこれは、いたずら坊主におあつらえむきなやつらがいるわい)。 和尚は、狐たちを驚かしてやろうと、信玄袋から法螺貝を取り出すと、大空に向かって、「ブゥォー」と吹き鳴らした。 狐たちは、大慌てに慌て、一目散に逃げだした。 そんな狐たちの姿を見て、和尚は腹を抱えて大笑い。 すっかり気をよくした和尚は、ふたたび南の浜の村に向かい、てくてく歩いて行った。
 用をすませた和尚は、朝来た道を折り返し、高足村に向かって帰りを急いだ。 天伯原まで戻って来た時、急に日が落ち、あたりは真っ暗闇となり、先に進むことができなかった。 途方にくれた和尚が、辺りを見まわすと、あっちの方にぽつんと一つ灯りが見えた。
「高林庵の坊主だが、すまんが今夜一晩泊めてくれ」
 すると、中から老女が出てきて、
「そりゃあいいが、夕方、家に死人が出てのん、わしゃあ隣の家まで伝えに行ってくるで、あんた留守番を頼まあ」
と言うと、さっさと出ていってしまった。 和尚が、仕方なしに留守番をしていると、(ありゃりゃ)、死人がのこのこと布団からはい出し、和尚の方に近寄ってきた。 和尚はびっくりして、一歩二歩と後ずさりした。 すると、また寄ってくる。 そんなことを繰り返しているうち、和尚は家の外に、谷川へと転がり落ちてしまった。
 和尚は腰を強く打ち、「痛てぇ」と大声をあげた。 その時、あたりがばっと明るくなり、そこは朝方、和尚が狐たちにいたずらをした場所だった。 和尚は、自分が、狐たちに化かされ、見事に仕返しされたことに気がついた。
「こりゃあ見事に一本とられたわい。 わしの負けじゃ。 いたずらもほどほどにせぬと、思わぬしっぺ返しを喰うわい」と、腰をさすりながら、高林庵に戻って行った。
 豊橋の民話「片身のスズキ」(豊橋市図書館発行)より引用 


高林寺

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