● 肩切地蔵 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 悟本寺に肩切地蔵″って呼ばれとるお地蔵さんがあるだけどが、知っとるかん? このお地蔵さんは、前には中野田(なかんだ)の松林ん中にあっただに。だもんで今でもそこの坂道を地蔵坂って呼んどるだに。このお地蔵さんはな、むかしお侍とかが刀を持っとった時代にすごく活躍したお地蔵さんなんだぞ。
 中野田のあたりは、よう悪い狐が出てのん、みんなしょっちゅうだまされたり、いたずらされたりしただわ。ある時、旅のお侍さんが通りかかりにそのことを聞いて、
「人をたぶらかすような悪ギツネは、わしが成敗してくれるわ。」
と、退治を買って出ただげな。それで、その晩お地蔵さんとこの松の陰に隠れて狐が出るのを待っとった。すると向こうから若い娘が歩いてくるのが見えたもんで、
「こんな夜更けに娘の一人歩きなんぞおかしい。あれは狐が化けているに違いない。」
と思って、木陰で刀を抜いて構えとった。娘が目の前を通りすぎようとしたとき、ガバッと飛び出て娘に斬りかかった。エイッと刀を振りきったそのとき、カチーンという音と共に刀から火花が飛び散った。お侍も一瞬何が起きただか分からんようになっただけども、すぐにハッと気がつき、目をこらしてよーく見てみると、そこには肩を切られたお地蔵さんがおった。
「ややっ、お地蔵さま。これは申し訳ない。」
と言って、お侍さんはお詫びにお地蔵さんのお堂を建ててあげただげな。
 それで平野の人たちも娘の身代わりになってくれたお地膿さんを肩切地蔵″と呼ぶようになっただげな。

 とよはしの民話(豊橋市教育委員会) より引用 


肩切地蔵

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