● 雨乞いの面 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 ある年の夏、幾日も幾日も雨が降らなかった。
「畑のきゅうりやなすが半分枯れかかってきた」
「田んぼの水が無くなり、ひび割れが出来てきた」
「水をかけてやりたくても、水なんか、どこにもありゃせん。ひと雨ほしいのん」
 困り果てた村人たちは相談して、お宮の宮司に雨乞いをしてもらうようにお願いした。昔は神さまに雨を降らしてもらうようにお願いする「雨乞い神事」があり、日照りが続くとあちこちで行われたものだ。
 村人たちみんながお宮に集まり、雨乞い神事が始まった。そのうち、だんだん空が曇ってきたので村人たちは喜んだが、ぬか喜びで雨は降らなかった。
 その晩のこと、神さまが宮司の夢枕に立たれ、
「お宮の宝物殿に大切にしまわれているお面を出して、雨乞いをするがよい」
と言われた。宮司は次の朝、お宮の世話役たちにその夢のことを話した。
 不思議なこともあるものだと早速、お宮の奥の宝物殿からお面を出して祭壇に飾り、村中総出で雨乞い神事を行った。
 すると、どうだろう。空がどんどん暗くなり、そのうちにぼつぼつと大粒の雨が落ち出した。村人たちの喜んだこと。本降りになった雨にぬれるのも気にせず、大喜び。畑や田んぼはたっぷりと雨を吸い込み、作物は生き返った。
 それから何年か過ぎて、またひどい日照りの年があった。今度は、最初からあの雨乞いの面をお祀りして、村中総出で雨乞い神事を行ったが、どんなに一生懸命みんなでお祈りしても、雲ひとつ出て来なかった。
 その晩、宮司の夢枕に立った神さまはこう言われた。
「川べりに住む嘉吉という者が、面を汚した。お宮の井戸水で洗い清め、お詫びの祝詞をあげてから、雨乞いをするがよい」
 次の日の朝、宮司が嘉吉に訊ねると
「どうしてもお面が拝みたくて、鍵を外し、お面を出してきて月明かりで見ておりました。人の気配がしたのであわてて返そうとしたとき、水たまりに落としてしまいました。見つかるのが恐かったので、そのまま返してしまいました」と正直に謝った。
 そこで、宮司はお宮の井戸水で面をていねいに洗い清め、お詫びの祝詞をあげてから雨乞いをした。すると、みるみるうちに雨が降り出した。この時の雨は3日3晩降り続いた。
 今でも石巻萩平町の日吉神社には、雨乞いの面が大切に残されている。

「片身のスズキ」豊橋の民話(豊橋市図書館発行)より引用 


日吉神社

一つ前へ戻る        HOMEへ戻る