● 山の背くらベ   前のページへ戻る   HOMEへ戻る 

 石巻山と本宮山は、いつも自分の方が背が高いと言い争いをしていた。この日も朝早くから、
「やい石巻山、お前が何と言おうと俺の方が背が高いぞ」
と、本宮山が大声で叫んだ。
 すると石巻山も大声を張りあげ、
「何をこくだ本宮山。俺の方が背が高いにきまっとらー。お前なんかに負けるもんか」と激しく言い返した、両方の山の神さまが石をぶつけ合うほどの大喧嘩となった。
 そこで、まわりの山々の神さまたちが集まり、
「このような争いをいつまでも続けさせておくのはよくないぞ。どっちが背が高いか、背くらべをしてやらまいか」
と相談した。神さまたちは、石巻山と本宮山の頂上に樋いをかけ、水を流した。すると、水は石巻山側に激しく流れ落ち、石巻山が負けてしまった。
 この時の、水の流れによって、石巻山の頂上の土がドッと流れ落ち、大きな岩がむき出しになってしまった。
 そんなことがあってから、石巻村の人々は、石巻山が少しでも高い山になるようにと、「石巻山に登る時、小石を持っていくと楽に登れるぞん。また、山の頂上に小石を置いて、願い
ごとをすると、ちゃんと願いを聞いてくれるだに」
という噂話をつくって、言い広めたので、それからは、石巻山に登る人たちは小石を持っては山に登り、頂上に置いて山の神さまに願いごとをした。
「今日は小石を持っていったお陰で、神さまが助けてくれたのか、こんきく(疲れ)なかったやあ」
と言う人たちが増え、石巻山は小石を持っていけば、だれでも登れる山で、ご利益のある山と言い伝わり、小石を持って山に登る人々で賑わうようになった。
 また、石巻山の北1キロメートルほどの所に、本官山との喧嘩で石を投げ合ったとき、飛んできたつぶて石だと言われる岩がある。
 このごろは、山上石巻神社にお参りする時、麓から小石を持って登り、灯篭にあげたり、鳥居に投げ上げてお参りするとご利益があると言われている。特に子どもがお参りすると頭がよくなるというので、遠くから子供連れでお参りに来る人もいる。

豊橋の民話「片身のスズキ」(豊橋市図書館発行)より引用 


石巻山

石巻神社

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