● 白い龍の住む竜ケ池″のお話 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 むかし、この辺りは、石のゴロゴロした原っぱでした。そのため少しでも日照りが続くと、すぐに水に困っていました。何年もの間飢饉に苦しんだ時もありました。稲作りが中心なので水は大そう大切です。幾つかの溜池はありましたが、充分ではありませんでした。溜池には、それぞれ主がおり、守っていましたが、この村の溜池にはまだ守り神様がいませんでした。村人は自分達の池にも主が住みついてほしいと常々思い、いつも水に困ることのない様にと願っていました。
 村長と村人達は、仕事の合間をぬっては集り、知恵をしぼりました。
「そうだ、年に一度春先に山の神様が、里の神様の所へご訪問する行事があると聞いた事がある。その時に皆でお願いしてみよう。」
ということになりました。
 その神様は大そう慈悲深い方で、困り事を頼むと、なんとかして望みを叶えてくれるとのうわさがありました。皆、その話に望みを託す事にしようと相談がまとまりました。
 今年もその時期がやってきました。時期はわかるのですが、いつかがわかりません。ですから、村人は皆で交代でずっと待ち続ける事にしました。何日もの間、我慢強く待っていると、ついにその日がやってきました。4月19日でした。桜の花がとても締麗に咲いている朝霞のかかる日のことでした。朝日が昇り始めると、霞の中に七色の虹がかかり、その上を神様の行列が降りてくるのでした。この神様の姿を見られるのは、一心に願いを込めた者達の念が通じたときで、いかに当時の人の思いが強く、純粋であったかが伺われます。
 集った皆は期待に胸を膨らませ、行列に進み出て村長を先頭に神様に直訴しました。
「神様、村人が安心して稲作りに励めるよう、我村の池にいつも水がたわわにありますようにして下さい。そして、その池に守り神をお授け下さい。」
 一同は声を上げ、一所懸命に頼みました。
「そうか、この池を大切に守りたい、そなた達の気持ち、よう通じた。その願い、必ず叶える事にしよう。もうじき雨季がやってくる。その時に天から白い龍を使わそう。龍は、この池の守り神となって水を欠かすことのないように見守ってくれるであろう。約束は必ず守る。待つがよい。」
と言って、霧の中にお隠れになりました。
 村人達は待ちました。
 6月の梅雨になりましたがその年は空梅雨で、人々は困りました。龍が降りてくるような気配はいっこうにありません。
「はてさて、どうしたもんか…。」
と心配顔を並べているその時です。
 急に突風が吹いてきたかと思うと、みるみる黒雲が出てきてかみなりが鳴り、大嵐になりました。
『ゴロゴロゴロゴロゴロ……ピカピカッ!』
その時です!黒雲の中から見事な白い龍が現れ、池を目指して降り立ちました。
「お〜!なんと素晴らしい!神様ありがとうございました。やっぱり噂どおりの神様じゃった。わしらの約束を守って下さった!」
 舞い降りた龍はこの池の水が枯れそうになると、いつも雨を呼び水を溜めて、村人を守り続けてくれました。
 村人は皆、感謝してこの池を竜ヶ池″と名づけ、祠をたてて大切にお祀りしました。それからというもの、村人は安心して稲作りに励む事ができました。

 今は竜ケ池″は埋め立てられ、公園となっています。天に昇った白い龍のかわりに桜の木が植えられています。春は締麗に花を咲かせ、咲き誇った後に舞い散る桜の花びらは、その年の皆の幸せを願う白い龍″のうろこのようです。
とよはしの民話(豊橋市教育委員会) より引用 


竜ヶ池公園と桜

一つ前へ戻る        HOMEへ戻る