● やまと姫の命の旅 前のページへ戻る   HOMEへ戻る 

 すごいあらしです。風はびゅうびうううなりをあげ、雨はよこなぐりに顔をたたきます。波は大あばれで、舟はいまにものまれてしまいそうです。
 遠くに小さなみさきが見えています。
「あのみさきのかげにはいれば、波もしずかだろう。陸へあがることもできよう。」
 かじ人たちは、ひっしで舟をあやつりました。
 むかしむかし、大むかしのことです。この舟には、やまと姫の命という神様とその家来がのっていました。
 ごせんぞの天照大神をおまつりするご座所(お宮を作る場所)をさがすため、あちこち旅をしているのでした。
 やっとみさきのはなまできたとき、かじ人の長がさけびました。
「あっ、かじが折れたっ。」
「どうしよう。」
「もはや、これまでか。」
 みんな青ざめて、舟にうずくまってしまいました。
 舟はどんどん流されていきます。それでもかぜのぐあいでみさきのかげへはいったのか、波はすこししずかになって、三河湾のおくふかく、小さな島に流れつきました。
 この島は、いまも姫島といわれています。
 海がしずかになり、舟をなおしたやまと姫の命たちは、また海にのりだしました。
 山々がかさなり合い、小さいけれど美しい川も流れている所がありました。仁崎の里です。上陸して、ここにご座所を作ろうかと、山へのぼったり、川をさかのぼってみましたが、山も川もまだまだ小さすぎるので、もっとほかをさがすため、三河湾を出ていくことにしました。
 小山があるみさきを通りすぎるとき、
「ああ、ここでかじが折れたのに、みさきのかげで助かったのだ。」
 みんなは手を合わせて、旅のぶじをいのりました。
 このみさきのことを、土地の人は、かじが崎というようになりました。
 田原町野田、西馬草のはずれにある小さなみさきです。
 やまと姫の命は、ほうぼうの国々をさがしあるき、伊勢の国宇治山田の、五十鈴川のほとりにご座所をさだめました。いまの伊勢神宮です。
 やまと姫の命は、仁崎の人の親切も忘れることなく、小さな川にも、伊勢と同じ五十鈴川の名をつけてくれました。

「もと」ばあちゃんのおはなし(田原市教育委員会)より引用 


五十鈴川

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