● 桐谷の鳳凰と竜 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 大野の天神山の下に、荒沢不動の滝があり、ここを桐谷と呼び、秋葉街道が栄えた頃には渡し場のあった場所であるが、今はここに東海自然歩道の立派な吊橋がかかっている。
 それは大昔の事であったが、この桐谷に桐の大木が茂っていて、その太さは10メートル、その枝は大きく伸びて、対岸の引地にまで届く程であった。
 ある時、この桐の大木へ鳳凰と言う瑞鳥が飛んで来たので、付近の人達は、この気高く美しい霊鳥を仰ぎ見て、強く心を打たれた。この瑞鳥鳳凰は、やがて鳳来寺の山の方へ飛び去って行ってしまったが、その後、時々飛んできた。
「鳳凰は瑞鳥だで、この付近にきっといいことが飛び込んで来るぞ」
「そうだな、めでたいことがあるとわしも思うな」
などと、ささやき合った。
 さてこの桐谷の桐の大木には、根元のところに非常に大きな穴があいており、その中に巨大な竜が住んでいた。
 この竜は、時々部落の方まで出てきたので、村の人達はこわがっていた。
「あんな大きな竜が出て来るとこわくてしょんないな。なんとか出てこんようにできんものかなあ」
とみんな首をひねった。そしてお寺の和尚さんのところへ相談に行き、
「和尚様、桐谷の竜が出てきて困るんですが、出てこんようにするいい勘考はありませんかねえ」
と尋ねると、
「わしも気にしているんだがねえ」
と首をかしげ考えられてから、
「そうだ、わしに一案があるから、皆さんと力を合せてやりましょうか」
と言って、和尚さんの案を話された。
「竜は大豆が好きだから、桐谷の付近から黒淵の川原まで豆をばらまいて、竜を黒淵の川原へおびき出し、川原に豆をどっさり置いて腹いっぱい食べさせ、そのあいだ中私と一緒に、竜封じ込めのお経を唱え、竜を黒淵の底深く封じ込むと言う案だがどうだろう。」
と言うのであった。
 村人達は大変喜こんでこれに賛成し、和尚さんの指示に従って準備を進め、いよいよ実行に移すことになった。
 いよいよ当日になり、村の人達は和尚さんの朗々とした続経に合わせ、竜の封じ込めの祈祷を真剣に続けていた。すると竜は桐の洞穴から誘い出され、好物の豆を食べながら、黒淵の川原までやって来た。その川原にはいっぱい豆が置いてあったので、竜は豆を食べては水を飲み、豆を食べては水を飲み、とうとう満腹し、やがて滑り込むように黒淵の中へ潜り込んで行った。
 村人達は、この様子を見てしめたと思いながら、なお再び出現しないように、和尚さんのお経に合せて、日の暮れるまで祈祷し続けた。
 こうした続経や祈祷が功を奏したのか、桐谷の大竜は2度と姿を見せなくなり、大野付近の村々に平和がやって来た。そこで村人達は、
「和尚さんは、やっぱり名僧だな」
「評判通り立派なお坊さんだ、ありがたかった、ありがたかった。」
と和尚さんに感謝したといわれている。

鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)より引用


荒沢不動滝

桐谷の吊橋

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