● 大洞山と龍 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 昔からかいくら淵は、大洞山の池につながっていました。そして、このかいくら淵に、不死身の、それはそれは大きな龍がずっと住んでおりました。また、ある時代のことですが、大洞山に知恵も徳もすぐれた1人のお坊さんがありました。
 ある日の夜のことです。和尚さんが本堂でお経をあげていますと、一人の美しい娘がやってきて、お経をじっと聞いておりました。和尚さんが不思議に思って尋ねました。
 「あなたはどうして私がお経をあげているのを聞いておられるのだ。」
 すると、その娘は、
 「実は、私はかいくら淵に住んでいる龍でございます。もう千年も住んでいるものですからいろいろ苦しみが多うございます。今あげておられるお経を聞いておりますと、不思議とその苦しみからのがれることができるような気がいたします。」
と答えました。それを聞くと、和尚さんは大変感心して、
 「それでは、その難儀からのがれるように、あなたにこのお血脈をさずけよう。そうすれば、もう苦しみはなくなるでしょう。しかし、ほんとうにあなたが龍かどうか見せてほしい]
といいますと、その娘は、
 「ありがとうございます。それでは、私にお血脈を下さるお礼に、龍のこけらをさし上げますから、もし、雨が降らないようなことがありましたら、このこけらを出して雨ごいをしてください。」
と言って、自分のわきの下から6枚のこけらをぬいて、和尚さんに手渡しました。そしてお血脈をいただきますと、娘のからだは、いなづまとともに龍の姿になって、池にはいっていきました。池は海のように波立ち、2つに割れたかと思うと、龍は底深くすいこまれるように見えなくなりました。やがて泡立ちがおさまって、もとの静かな池にもどりました。
 龍のこけらをもらった和尚さんは、2枚を大洞山におき、2枚をかいくら淵の弁天様へおさめました。そして、後に、この和尚さんは、豊橋の仁連木に全久院というお寺を開きましたので、そのお寺の宝物として、2枚のこけらをもっていきました。それからというもの、旱ばつのたびに、かいくら淵の弁天様にお経をあげ、舟を浮かべてこけらをみせますと、やがて雨が降り出したということです。
龍のこけらというのは、直径4センチほどの大きさだそうですが、大洞山のこけらは焼けてしまい、弁天様のこけらもなくなってしまいましたが、全久院には寺宝として今も残っているそうです。

 新城昔ばなし 365話(新城市教育委員会発行) より引用 


大洞山泉龍院と龍神池

かいくら淵

全久院

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