● お聖様(おひじりさま) 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 昔、四谷の大林村へ旅僧がやって来たが、どうしたことか、重い病気になり歩けなくなってしまった。
 この様子を見た村の人達は、この旅僧を気の毒に思い、近くの松林の中へ小屋を建て、親切に看病してあげた。
 この旅僧は大変に学問があり、教養も高く、寄って来る子ども達や村の人達に、全国あちらこちらの珍らしい話を聞かせたり、ありがたい教えを説いたりして喜こばれた。
 村の人達が
「お坊様は何がお好きですか」
と聞くと、
「わしは松笠が好きでのう」
と言った。
 そこで子ども達も村の大人達も、お礼にと言って、自分の齢だけ松笠を拾って、これを輪につないで
「お坊様、松笠をどうぞ」
と言って持って行くと、お坊様はうれしそうににこにこして、
「なむ」
と言って手を合せ、これを受取って軒につるすのだった。
 それでとうとうお坊さんのいる小屋は、松笠で埋まってしまう程になった。
 こうして子どもに好かれ、村人から感謝され、松笠にうずくまって療養しているこのお坊さんを、村の人達は「お聖様」と呼ぶようになった。
「お聖様、体の具合いはどうですか」
と、村人達が入れ代り立ち代り親切に看病に来てくれたので、旅僧の病気も快方に向っているようにみえたが、ある日急に病気が重くなってしまった。
村の人達は、心配しながらみんな集って来た。
「お聖様はどんな様子だ」
「お聖様は大丈夫か」
と言葉を交しながら看病に努めたが、だんだん容態が悪くなるばかりだった。
 そのうちに、枕元に集っている村人達に向って、旅僧はかすれた声で
「みなさんのご親切を、心からありがたく感謝しています。なんとか元気になって、皆さんのご親切にこたえたいと思ってきましたが、死期が迫ってしまいました。ついては私は死んでも、魂はこの村に残って・・・・・・・」
と語りながら声がとぎれとぎれになってしまった。心配した村人達は
「お聖様、お聖様」
と呼び続けた。するとお聖様は弱々しい声でしゃべりだした。
「・・・・・・・・私は死んでも魂はこの村に残って、この村の繁栄と皆さんの病気を治してあげます。病気になったら私の名を3べん呼んで下さい。治ったら私の好きな松笠を・・・・・・・・」
と言いながら息たえてしまわれた。
 お聖様が亡くなってからも、お聖様の評判は一層高くなり、近郷の村々にまで伝わって行き、お願いに来る人や、お礼参りに来る人でにぎわい、お墓は松笠で埋まってしまう程でした。
 やがて心ある村人によって聖神(ひじりがみ)としてお祠が建てられ、さらに大林寺の横に聖堂(ひじりどう)が建てられ、参詣者があとを絶たない。

鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)より引用 


大林寺と聖堂

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