● 保永の三滝 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 保永の三滝は、一の滝、二の滝、三の滝と3つ滝が連なっている大きなものです。その中でも、一の滝の滝つばは深く青ずんでおり、昔から底が知れないといわれていました。ここには蛇穴という岩穴があり、昔からこの蛇穴に大蛇がすんでいるといわれていました。滝の付近で草を刈っていた人が、「ザー」と草の上をずるような音を聞いたり、山道を横切る大蛇の尾の部分を見たなどという人が、ときたまありました。この蛇穴は、新城市稲木の泉竜院の井戸に続いており、大蛇は一の滝とお寺の井戸の間をいききしていました。あるとき、この寺の門を改築することになりました。二階建ての立派な、こった造りの門でしたが、なにぶん古くて、屋根に穴があき、柱は根元がくさりかかっておりました。和尚さんや村人たちが改築の相談をしているうち、この門のそばにある、かれて使いものにならない井戸も、一緒にうめてしまおうという事になりました。毎日毎日大勢の人夫たちが忙しくたち働いていました。もうその日の仕事も終ろうとしていたとき、突然門の屋根の一部が下にいた人夫の足に落ちてきました。
「どうしてあんなものが落ちるんだ。」
「あそこは、わしが確かに止めたぞ。」
 人夫たちはこの思いがけない事故に、興奮ぎみに声高にしゃべり合った。よく見ると、この人夫たちに混って、誰れも顔を知らない美しい娘が1人おりました。そしてこの大さわぎを確かめると、さっといなくなってしまいました。次の日のタ方、また事故が起こり、門にたてかけてあったはしごが、乗った人夫もろとも倒れてしまいました。
「さっきわしが登ったときは、なんともなかったのに。」
「あの身の軽いやつが。おかしな事だ。」
 首をかしげるやら、ア然とした表情で見つめる人やら、人夫たちはみな不思議がりました。きのうの美しい娘がまたこのさわざの中に混っていました。そしてこの事故を見とどけると、身をひるがえしいなくなってしまいました。
 次の日、仕事をしまおうと屋根の上で向きをかえた若い人夫が、足に何かからまったような感じで、足を滑らせて落ちてしまいました。3日続きの事故に、仕事をしていた人夫たちは、ロぐちに、
「これは何かのたたりだ。」
「今に、もっとひどい事が起こるぞ。」
と、ささやき合ったり、つぶやいたりしていました。この大さわざの中で、この日も美しい娘がいるのを、ここのおしょうさんが見のがすはずがありません。娘の体、全体から出ている妖気をおしょうさんはきのうの事故から気づいていたのです。その娘のそばに、すっと近づくと、
「ビシッ。」
 娘の肩を携えていた杖でたたきました。するとその美しい娘はたちまち大蛇となって、門の屋根を乗り越え井戸の中ににげ込みました。そこでおしょうさんは、すかさずこの寺にだけ伝わる呪文を一心不乱にとなえ続けました。大蛇を井戸の中に封じこんでしまったのです。人夫たちはもう2度と出てこれないように、悪さをしないように、と大きな石で井戸にふたをしました。これ以後、大蛇はみられなくなり、門の改築も順調に進み、立派な門が完成したということです。

つくでの昔ばなし(作手村文化協会)より引用 


保永三滝

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