● 水神淵の森 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 塩瀬の北のはずれで、島田川と巴川とが合流しているが、この合流点近くに、大変ありがたい水神様がおられる淵があり、この淵を水神淵と呼んでいる。
 この淵の付近は、今は耕地がひらけているが、昔は大木の茂った森があり、島田川や巴川に大水が出ると、この森にぶっつかって水が調整され、塩瀬の部落を水害から守ってきたところから、水神の森と呼び、塩瀬にとって大変ありがたい森となっていた。
 昔、ある夏の大層暑い日のことであった。奥の方の空が急に真暗くなり、すごい雷が鳴りだした。すると川の水が急に減りだし、川の魚が飛びはねだし、川の様子が変になってきた。この様子を見た村の人達は、
「どうも変だな、何か変ったことが起きそうだな」
「そうだ、あの川の魚の飛びようは普通じゃあないな」
とお互いに心配しだした。
雷はすごい音をたてて鳴り続け、北の方の空の黒さはなみではなかった。
「こりゃあ何かが起きるぞ」
とだれもが思った。そんな時、ある若者が、
「こりゃあ川上で異変が起きたぞ、わしがひと走りして様子を見てくらあ」
と叫び、馬に飛び乗って川上へ向って偵察に出かけた。
 この若者は、作手の大和田部落の見えるところまで走った。すると耳の鼓膜が張り裂ける程のごう音が鳴り響いた。
 若者は驚いて音のする方を見上げた。すると、大洪水が大和田部落の家や田畑を押し流しながら、谷にあふれて下ってくるのだった。
 若者は、この様子を見てぴっくりし、馬を返して走り帰り、
「おーい、大水だ、大洪水だ、みんな避難せんとやられるぞ、どえらい大洪水だぞ」
と、大声で部落中へ叫びながら伝えてまわった。
 部落の人達は驚いて、急いで避難を始めた、そのうちに、大和田部落を呑んだ濁流が、音をたてて、塩瀬部落を押しつぶす勢いで押し寄せてきた。そしてものすごい勢いで水神淵の森へぶっつかってきた。
 それからしばらくの間、森と水のはげしい闘いが始まった。しかし水神の森はびくともせず、ついに大洪水の気勢をそぎ、塩瀬部落は水難から救われたのであった。
「水神様ありがとう、水神様ありがとう」
と、みんな手を合せて感謝した。
 やがて水が引き、川はふだんの流れになったが、あの水神森は土砂がいっぱい押し上げられ、大きな島になって、洪水のものすごさを物語る姿を残していた。

鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)より引用 


水神淵

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