● 水神淵の主 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 川手村の郷中にかかっている高橋の100mくらい下流に水神淵という深い淵があります。昔、川手村のある娘さんが、巴川の川端で、いつもの口癖の
「及びなけれど川中島のわかち様(註わかちはわかちごのこと)ならもう一度」と繰りかえしロ吟さみながら洗濯をしておりました。すると、その夜、娘さんの部屋に、立派なお小姓姿の青年が訪れました。娘さんとこの青年とは、忽ち割りなき仲と結ばれました。それから毎晩のように、この青年は、ひそかに娘さんの部屋を訪れましたが、どこの誰とも名乗りません。娘さんは、ある夜、この青年の袴に糸をつけた針をさしておきました。
 翌くる朝、この糸を辿ってゆきますと、水神淵に入っておりました。竜神は、極度に針を嫌うそうですから、袴に針を刺されたことを怒ったのか、それ以来、ぷっつり娘さんのとこへ若衆様が来なくなりました。
 日が経つにつれて、娘さんは、懐妊していることがわかりました。そして月満ちて分娩したのは蛙の卵のようなものばかりで、大たらいに一杯もありました。村人たちは、娘さんを訪れたお小姓青年は、水神淵の竜神の化身であったかと噂し合っておりました。

つくで百話(作手高原文化協会) より引用 


高橋と水神淵

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