● あかなし様 前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 昔、塩谷の人達が山仕事に出かけた。そして1日の仕事を終えて帰ってくる途中、水無沢に倒れているけやきの大木を見かけた。
「おい、これを辛灰にするといいぞ」
と1人が言いだしたので、仲間の者達も、そのけやきの大木のそばへ寄り、
「こりゃあ、大木だ。ぜひ辛灰にせまいか、どっさり出来るぞ」
と言って賛成し、この大木を焼くことになった。
 辛灰というのは、けやき、くり、かしなどのかた木を焼いて作った灰のことで、染物の媒染剤として使われるもので、商品価値があり何よりな収入になった。
 そこで早速、焼く準備をしだしたが、その大木に大きな穴があいていたので、そこへ枯木と落葉を詰め、火を付けて帰ってきた。
 翌朝この人達は、鳳の窪の水無沢へと向った。そしてけやきの大木の焼け具合はどうかなと思いながら、大木のそばへ寄って行って見ると、けやきはきれいに灰になっていた。
「おーい、具合よく焼けとるよ」
「そりゃあよかったな」
などと言いながら、背負子に付けてきた袋をおろして、灰を詰め始めた。
 ところが灰を集めていると生臭いにおいがしてきた。
「ばかに臭いじゃあないか」
「なんの臭いがするのかなあ」
匂などと言いながら詰めていると、
「おや、こりゃあなんだ。骨じゃあないかな」
「ここにもあるぞ、こりゃあ骨だ、骨だ」
と不審に思う言葉を交しながら、集めた灰を背負って家へ持ち帰った。
 ところがその晩から、辛灰をとりに行った人達が、熱が出てうなされだした。3日たっても4日経っても治らなかったので、家の人達が心配しだし、近くの行者さんのところへ行ってみてもらった。すると行者さんは、
「こりゃあ古い長虫(蛇)のたたりだ」
と言ったので、山から持って来た辛灰を調べてみると、白い骨がいっぱい出てきた。
「こりゃあ鳳の窪の大蛇を焼き殺した骨だぞ」
「大変なことをしたものだ。骨を全部集めて供養せにゃあたたりが解けんぞ」
と言いだし、辛灰の中の骨を全部拾い集め、石棺に入れて塩谷の一角に埋め、鳳来寺の念成坊に供養を頼んだ。
 念成坊は「浄障無垢大善神」の戒名を授け、丁寧に祭ってくれた。するとあれ程うなされていた病人が急に全快し、塩谷の人達はみんなほっとした。
 それからは、盆の15日がくると、部落中の人がこのあかなし様の前に集り、たい松を炊き鉦を打ち鳴らしながら、
「鳳の窪のけやきのもとに納まりて、今じゃ垢なし大明神」
と唱えながら大蛇の供養をするようになった。

 鳳来の伝説(鳳来町文化協会発行)より引用 


あかなし様

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