● 客人権現のワラ人形 前のページへ戻る   HOMEへ戻る
              
 むかし蒲郡の吉光に客人権現という社があった。鵜殿八郎三郎長信が下ノ郷城主になった時に熊野三社のうちの新宮の神ノ倉権現を勧請しておまつりしたものと伝えられている。
 神様にもいろいろあるが、この神様は耳や歯の痛みをなおしてくださるというので、歯磨楊子(今の爪揚子)をお供えしてお祈りをすると御利益があると言われていた。
 ところが、今から90年ほど前のこと。1人の青年が歯痛に悩んで客人権現へ楊子をお供えをしてお祈りをしていると、近くの御神木に人形が1体無残にも5寸釘で打ちつけてあった。
人をのろい殺す願いをこめた調伏の印である。前の夜の丑3つ時(午前2時ころ)にでもだれかが人形を打ちつけたのか、まだ真新らしいものであった。
 人をのろい殺す調伏とは、まず体を清めて八畳の部屋の真ん中に寝床を敷き、その中へ鯨の物差しを入れたり出したりしながら何回となく祈りごとを述べ、物差しで寸法を計ってワラ人形をつくり、丑3つ時の真夜中にまゆを隈取り、頭に三脚五徳を乗せ、ローソクを灯し、あしだに乗ってお宮へ参り、作ったワラ人形を5寸釘で御神木にはりつけにしてお祈りをするのが定法となっている。
 丑3つ時にお参りする女に出会って見つけられると、命がないという俗信もあるので、だれにも見られないようにしたそうである。
 この客人様の祈りの人形は、今時珍らしいと評判になり、ある時お巡りさんが来て、ワラ人形を取り払い、『悩み事は、人事相談へ』といぅ貼り紙を出したところ、2人の婦人が訪れたそうだが、その婦人が調伏人形の主であったかどうかは知らされていない。
 客人権現は、今は長存寺内の智積院の本堂の前にある。
西の郡の民話 ほんとのんほい より引用 


長存寺と客人権現

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