● 紅さしたにし   前のページへ戻る   HOMEへ戻る
むかしのことじゃ。神ノ郷に鵜殿城というたいそうなお城があった。このお城にはとてもきれいなお姫様がおった。いつも美しい紅をさして、戦から帰る父様を待っておった。
ある日、敵の大名からお姫様をよこせと言ってきた。渡さなければ戦になる。お姫様は、お城のためなら自分を渡してくれと父様に頼んだ。しかし、大切な姫を敵に渡すことはできんと、父様は戦をすることにした。
鵜殿の兵たちは、強いが数が少ない。それでも何十倍という敵を相手に勇ましく戦った。刀ややりが折れてもこぶしを振り上げて、10日間戦い続けた。
戦う兵が少なくなり、お城のあちこちから火が出て、美しいお城が無残な形に変わっていった。とうとう11日目に敵の軍勢がお城になだれ込んできた。
ふと見ると、ひとりの若い女が大勢の兵に追われて逃げて行く。「あれはお姫様じゃ。」というさけび声があがった。みんながそこに目を向けると、美しい衣をまとった女が、お城の池に身を投げるとこじゃった。お姫様は紅をさして死んでいったと、ひとりがささやいた。遠く離れた人影なのに、紅をさしたきれいなお姫様の顔が確かに見えたようにみんなには思えた。
城跡に残る、お姫様が身を投げた熊が池には、それからはたにししか住まなくなった。そして、この池のたにしは、みんな紅をさもておると。

 広報がまごおり(平成23年8月号) より引用 


上ノ郷城

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