あわてた城攻め   前のページへ戻る   HOMEへ戻る

 むかし、上ノ郷と竹谷に城があった。
 2つの城は、馬でかければひとっ走りの近い所にあった。
 上ノ郷には、海の向こうの熊野からやってきた鵜殿氏が、竹谷には、そのころ岡崎でどんどん勢いをましていた松平氏の分家が住んでいた。 2つの城の人びとは、いつも行ききしてなかよくくらしていた。 ところが、岡崎の松平氏が鵜殿氏のなかまの今川氏となかが悪くなると、なんだか、2つの城の間も気まずくなってきた。
やがて、行ききがだんだんとへって、とうとう、2つの城はにらみ合うようになり、悲しいことに敵となってしまった。
「竹谷のれん中にはこまったもんだ。」
「きんのうも馬で田んぼをあらしまわったそうだ。」
とうとう上ノ郷の人びとはかんにんぶくろのおが切れてしまった。 それで、ある夜、こっそりおしかけて竹谷の城をやきはらってしまうことにした。
 夜がふけて、あたりに人かげがまったく見えなくなったころ、上ノ郷城の大手門がぎいっと静かにおし開かれた。 上ノ郷の兵たちは、やりや鉄砲を持って竹谷の城へ向かった。 ちょうどよいあんばいに月はなく、だれにも気づかれることなく、竹谷の城に近づくことができた。
 ところが、びっくりしたことに、竹谷の城の庭にはかがり火があかあかとともって、暗やみの中に城が、くっきりとうかび上がっているではないか。
「さあ、さあ、
 どっちも、どっちも。」
「やあ、やあ、
 勝ったぞ、勝ったぞ。」
じっと息をひそめていた上ノ郷の兵たちに、竹谷の城の人びとが大さわぎをしているのが聞こえてくる。
「こりゃ、あかん。 竹谷のやつら気がついとるぞ。」
「このまんまじゃ、城をせめても、こっちがあぶないぞん。」
「わしらがせめるのをまちかまえとるぞ。」
上ノ郷の兵たちは、気づかれたことがふしぎで、
「何で竹谷をせめることがわかったかなあ。」
「うっかり攻めないでよかった。 命が助かった。」
などといいながら、ひきかえしてしまった。
 そのころ、竹谷の城では、城中の人びとが庭に出て大かがり火をたいて、力くらべやすもうをして大さわざをしていた。 上ノ郷の兵たちが、城近くにしのびよって、このさわぎをとりちがえて、あわててにげ帰ったことも知らずに、いつまでも、いつまでも大さわぎをしていたと。

蒲郡のむかしのはなし(蒲郡市形原小学校・PTA発行) より引用 


上ノ郷城跡

竹谷城跡

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